2011年10月24日月曜日

Bollywood映画紹介:①Guzaarish ファンタジック社会派ムービー

2010年年末インド旅行時、Jaipurの夜に何もやることなかったので、映画に行きました。以来、Bollywoodにはまってます。一瞬にして虜になりました。日本では全然公開されないしDVD/ブルーレイ発売もないBollywood。自分自身も然り、ですが、みなさん「ムトゥ・踊るマハラジャ」的イメージしか持ち得てないんじゃないでしょうか。そのイメージは、古いです。そして、「ムトゥ」はタミル語(インド南部の言葉)なので、ヒンディー語メインのBollywoodではないです(ご存じの通り、インドは多民族多言語の国なので、様々な言語で多数の映画が作られてます)。今のBollywood作品はかなり洗練されてます。そして、面白いです。

日本でのBollywood認知度を上げて、ゆくゆくは劇場公開、せめてDVD/ブルーレイ発売というかなり壮大なゴールを目指して、地味にBollywood映画のご紹介をしていきます。私は日本在住ですので鑑賞する機会はonlineもしくはインド旅行時の機内上映/現地劇場鑑賞/現地調達DVDに限られますので、話題の映画とか全てを網羅できる訳じゃないのですが、とりあえず観たものはupしていきたいな、と思います(英語字幕、もしくは字幕なしでヒンディー語にてストーリーは想像で観てるので、多少間違いはあります)。

①Guzaarish
2010年/ 出演:Hrithik Roshan, Aishwarya Rai Bachchan
ジャンル:ファンタジック社会派シリアスドラマ
歌・ダンス:極少ない。歌って踊らない。ダンスのみ。

【キャストについて】
(Bollywood映画を語るには、まず俳優についてご紹介しないと上手く伝わらないような気がして・・って、この先どんだけ話長くなるのでしょうね・・)
●Airhwarya Rai Buchchan(アイシュワルヤ・ライ・バチチャン):Bollywoodにはまる前、私が唯一知ってたBollywood俳優はAishwarya Rai。南ア滞在時に知りました。ランコムだかメイビリンのマスカラ広告に出てて、天まで伸びそうな長い睫(マスカラの広告ですからね・・)、翡翠色の大きな目、整った美しいい顔立ち、でも欧米系とはどこか違うエキゾティックな雰囲気がとても印象できでした。ミス・ユニバース受賞後鳴り物入りで映画界へ、そのままトップ・スターというか当代随一の大女優へ。まさにBollywoodの女帝的存在。
●Hrithik Roshan(リティク・ローシャン)は、GWラダック旅行時に空港で適当に買ったFilmfareなる映画雑誌で知りました。とにかく、濃い・・所謂「インド人」的濃さじゃないんだけど、濃厚すぎて、何だこの人は!と思いました。透けるような翡翠色の目、端正な顔立ち、厚い胸板、鍛え抜かれたバディ、何かよくわからないけど写真からもオーラびんびん伝わってくるような、スーパーな存在。

まあ、2人ともアーリア人色が強くて翡翠色の目に色白だし、所謂(一般に日本人が想像するような)「インド人」とはイメージ違うかも。それがこの映画の不思議な雰囲気のkeyなんですけどね。

【ストーリー】
ゴア近郊の洋館。天才マジシャンとして名を馳せたネイサン(Hrithik Roshan)は、15年前のマジック・ショー中の事故が原因で首から下が不随となり、看護師ソフィア(Aishwarya Rai Buchchan)の献身的な介護を受けながらラジオ番組でDJをするなどしていた。ある日、ネイサンは旧知の弁護士に1つのお願いをする。それは、15年に及ぶ首下不随からの自由、安楽死(Mercy Killing慈悲ある殺害?翻訳力なくてすいません, euthanasia)の許可申請であった。秘められたネイサンの願いに、旧知の弁護士、献身的な介護を続けてきたソフィアは当然ショック。ネイサンはラジオ番組で自身の意向を伝えるが、当然リスナー困惑。でもネイサンを深く理解する旧知の弁護士は、裁判所へpetitionを行う。ネイサンは「首下不随でも明るくDJしてみんなに元気を与えてくれた」的表象となってたこともあって、当然世間も賛否両論。世間を巻き込みながら裁判は進んで行き、ついに判決の時が来た。


Guzaarish (Trailer)

【免責事項(!)】
まず私、インドにおいて安楽死が法的に、また宗教的、文化的にどのような位置づけか、知りません。なので、この映画中での安楽死の議論がどおのこおのとか、何も言えません。そして、Bollywoodは往々にしていろんな要素を織り込んでストーリーが長くなっていくので、ぼやけないためにマイナーな要素は省いてあらすじをお伝えしましたが、当然もっといろんな出来事が起こります。

【映画のみどころ】
Bollywoodといば!な娯楽的ではない、かなりシリアスなストーリーとメッセージ。「安楽死は認められるのか?」をストレートに問いかける。Hrithikが一見それほど「長年苦痛に耐えてきたけどもう限界です」的に見えないのも巧妙(ナチュラルなのか、設定なのかは不明)。「どうゆう状況なら、安楽死は許されるのか?」という範囲設定までも含めた恰好になっているから。Hrithikの安楽死petitionに対する身近な人(Aishwaryaとか)や世間からの様々な反応も興味深い。長年ポルトガルの植民地だったゴアという舞台設定と、Hrithik&Aishwaryaのビジュアルから、前時代の欧州を連想させる、インドでありながらもインドでないような、不思議な劇空間。ちなみにHrithikはカトリックという設定になってる。神父さんも出てくる。Hrithikの現役時代のマジック作風そのまま、ファンタジックでミステリアスな独特の雰囲気を終始貫いてるのがこの映画の魅力でもある。長年ポルトガル領だったゴアのイメージを上手く使った作品。この映画、Hrithik & Aishwaryaじゃなきゃできなかった。少なくとも、ここまでの独特の雰囲気をか醸し出すことはできなかったんじゃないかと。ゴア×Hrithik×Aishwaryaの化学反応です。あと、Hrithik、Aishwarya共にBollywood当代きってのスター達なだけあって、数少ないダンスシーン(しかもソロ)のクオリティ高い。

【結論】
Bollywood=所謂「インド」的人たちがいっぱい出てきてストーリー単純、というか有り得ない困難が襲い掛かりまくるけど最後円満、歌&ダンスシーン満載、ちょいださめ、田舎ぽい、娯楽娯楽娯楽~、なイメージぶち壊します。


【蛇足:私、卒論はCultural Studiesで映画でした】
不思議な浮遊感を持った映画。インドを舞台にしたBollywood映画のはずなのに、前時代の欧州みたい。そう、この映画は前時代的な欧州ぽさ=非インドさを意図して作られたものではないかい。以下の通り徹底して前時代的な欧州の設定だし:

・元ポルトガル植民地、ゴアが舞台
・Hrithikは植民地時代に建造されたぽい洋館に住んでる
・洋館の内装、家具も欧州風。植民地っぽい
・Aishwarya Raiが着ている服がいつもクラシカルな欧州風ドレス(19世紀後半的な感じ)
・ちょいちょい出てくる、不随になる前のHrithikが活躍するマジック・ショーのシーンの舞台は、欧州のオペラ座的な劇場
・Hrithik & Aishwaryaが所謂「インド人」ぽくないこと、というかむしろ欧州人ぽいビジュアル
・Hrithikはカトリック教徒という設定
・ゴアの裁判所へ行くときの車がクラシカルなオープンカーだ
・心なしか、通常のBollywoodより英語セリフ率が高い気がする(通常のBollywoodも英語セリフが多いし、帰国子女ないしバイリンガルのようにヒンディー語に突然交じる)。特にAishwarya Raiなんてほとんど英語で喋ってないか?とすら思われる。
・全体的に画面が暗い
・Bollywoodといえば!のダンスシーンすごく少なくて、かつ、踊りが欧州的だ。回想シーンでのマジック・ショーで幻想マジック演出の一環でモダン・バレエ的舞を踊るHrithik、ゴアのレストランで、フラメンコ的な踊りを披露するAishwarya。

所謂「インドぽさ」を全く強調しない映画です。
(Aishwaryaの旦那の登場とかは、「インド」ぽい)
でも、「インド」ぽさってなんでしょう。インドは多民族・多言語・多宗教etc..とにかく「多」が付く国。国土も広大で風土も気候も歴史も全然違う地域がなぜか統合して国境線を引かれてできた国。その中でも、人口が多かったり、海外メディアに露出しがちな集団によって、一定の「インド」のイメージが日本のみなさまには共有されてるかとは思うけど、1つの固定された「インド」なんて有り得ない訳で。ポルトガルの遺産:ゴアだって、欧州的な表象だって、ダイバーシティに富んだIncredibleなIndiaの1つなんです。という主張よりは、日本人と同じで、「欧米へのアコガレ」、翻って、インドもこんな欧州的なんですよー的アピール?とか、欧州的でおしゃれでしょ、みたいな興行用娯楽的要因?それとも「安楽死」議論がリアルな設定だったら重すぎるから、欧州的にした?なんて、とにかく非「インド」ぽい映画です。

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